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重心と姿勢前回は姿勢をタイプ分けして筋肉や障害について少し説明しましたが、
今回は、負担を少なく姿勢を保つために、重力の観点から説明します。
普段気づいていないかもしれませんが、地球上にいる以上は、常に重力の影響を受けています。
そして、物体にかかる重力の合点が物体の中心であり、「重心」です。
人間の重心は
●立っているとき ⇒骨盤内で上から2番目の仙骨のやや前方といわれています。
●イスに座っているとき⇒上から9番目の胸椎のやや前方といわれています。
しかし、重心は個人差があり、プロポーションや年齢によって、異なります。
重心を通る垂直線のことを重心線と呼びます。つまり重さの中心からまっすぐ地面に引いた線のことです。
例えば、お盆などの板で考えるとわかりやすいです。
お盆を指一本で支えようとしたとき、指がお盆の端にあったらバランスが悪いです。
お盆の中心に重さの中心、つまり重心があるからです。
重心の真下に指を置けば指一本でお盆はバランスを保ちます。逆に上から糸でつるす場合もこの重心からまっすぐつるせばお盆はバランスを保ちます。
次に、地面に接する場所を支持基底面といい、
両足で立っているときであれば、両足の足の裏とその間の面のことです。
座っているときであれば、両足の足の裏とその間の面✙座面となります。
例えば、お盆にコップを一つ乗せることを考えると、お盆の端に乗せるのではなく、中心に乗せたほうが安定しますよ。基底面の中心に重さがかかれば、面全体に重さが均等にかかるので安定するわけです。
以上のことを踏まえて、
支持基底面の中心に、重心線が近ければ近いほうが安定性は高くなるということがわかります。
反対に、支持基底面の辺縁に重心線がくると不安定となり、更に、支持基底面から外れると転倒してしまいます。
そのため、不安定になると、筋活動が増えます。
「気を付け」の姿勢は、
両足をくっつけ立つ為、支持基底面が狭く、
中心から辺縁までが近いので、少しでも中心からずれてしまうと、安定性が低くなってしまいます。
更に中心も小さくピンポイントとなるので、中心に居続けることが難しく、
まさに、常に気を付けていなければならない、緊張している姿勢になります。
反対に「休め」の姿勢は、
足を広げて立つ為、支持基底面を広くし、
中心から辺縁が遠いので、少し中心からずれたとしても、安定性が高い状態となります。
そのため、筋活動が少なく済み、気も体も休めることになります。
立っているときにはこのように、重心線と支持基底面との関係から、
筋活動の量(負担)が決まり、姿勢を保つ際の負担が直結しますが、座っている姿勢では違ってきます。
イスに座っているときの支持基底面は座面がプラスされるので、
立っているときよりも広くなりますが、その中心の位置が問題です。
イスに座り、膝を直角にして座っているとすると、
つま先から座面のお尻の端っこのちょうど中間位置、つまり、『太ももの真ん中辺り』に中心がきます。
真っ直ぐに座ろうとすると、重心線が支持基底面の中心からずれて辺縁にきてしまいます。
イスに座って、良い姿勢(アライメントが正しい)を保とうとすると、筋活動(負担)が大きくなります。
反対に、重心線を支持基底面の中心に近づけるには、背中を丸め、頭を前に移動し重心を前へとずらします。
この姿勢では、猫背で頭が下がり、顎を前に突き出している姿勢となります。
いかにも、デスクワークの方の姿勢です。
この姿勢は筋活動が少なく楽ですが、アライメントが悪いので、
前回に説明したように「筋の長さ」の異常が大きくなります。
イスに座るときに、お尻を前にずらして背もたれに寄りかかっていたり、膝に肘をついたりと、
重心の位置をずらしたり、支持基底面を広げることで安定性を高くし、筋活動を減らしたとしても、
良い姿勢とは言えません。
楽な姿勢かもしれませんが、筋肉に対してのみです。
骨格、関節への負担は増えてしまいます。
しかし、筋活動が少なくなるので、楽な姿勢です。
楽な姿勢を習慣化してしまうと、
〇筋の長さ問題・・・肩こり、腰痛、胸郭出口症候群
〇骨格の問題・・・変形性関節症、狭窄症、ヘルニア、ストレートネック
〇関節の問題・・・頚椎症、腰椎症、仙腸関節炎、顎関節症
等々
様々な障害へと繋がってしまいます。
座る姿勢でも、正座では、支持基底面も広く、重心線の位置も
支持基底面の中心に近くなります。
しかし、長く座っていることも、デスクワークでも難しいですね。
足もしびれてしまいますし、膝にも負担が多くなります。
なにが良い姿勢なのか、難しい問題です。
姿勢は、
立っている・座っている・寝ている など、体位と
骨盤前傾や頭部前屈 などの体の部分の相対的な位置関係
の組み合わせにより決まります。
その時々の目的によって、それらが良い組み合わせであることが大切になります。
デスクワークや立ちっぱなしでのお仕事の方、
スポーツやダンスをする方、
それぞれに必要な姿勢の取り方を身に付けましょう。